ご挨拶

第41回日本脳腫瘍病理学会

会長 永根基雄

杏林大学医学部脳神経外科学 教授

謹啓

時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

この度2023年(令和5年)5月26日(金)・27日(土)の2日間、第41回日本脳腫瘍病理学会学術集会をステーションコンファレンス東京において開催いたすこととなりました。私個人としても、杏林大学医学部脳神経外科学教室並びに病理学教室にとりましてもたいへん光栄に存じております。

日本脳腫瘍病理学会は日本脳神経外科学会における脳腫瘍関連学会の中でも歴史が古く、1982年にウィーンで開催された国際神経病理学会の際に、石田陽一教授(群馬大学病理学)、景山直樹教授(名古屋大学脳神経外科)、吉田純先生(名古屋大学脳神経外科)と河本圭司先生(関西医科大学脳神経外科)の4人の日本人先駆者により、日本に脳腫瘍病理の研究会を設立することが議論され、1984年に研究会として発足しました。その後、1997年から“日本脳腫瘍病理学会”として発展してまいりました。脳腫瘍における病理診断並びにその基礎的研究や臨床的応用を含めた基礎・臨床病理学に対して、脳腫瘍病理医、脳神経外科医、脳腫瘍研究者、神経内科医、脳腫瘍医(Neuro-oncologist)、放射線診断医、放射線治療医を中心に、研究および実践、治療を含めた臨床応用や教育的観点から学際的交流、意見交換、診断・治療開発を推進することを目的としています。年1回一堂に会し、2日間を脳腫瘍の臨床・基礎研究の両方の見地から病理診断と病態解析にスポットを当て学術的な討議を行います。

第41回日本脳腫瘍病理学会学術集会におきましては、テーマを「Harmony, Integration, and Beyond」とさせていただき、様々な脳腫瘍型の診断とその変遷、現状、今後の展望について議論したいと思います。従来から診断の根幹にある病理形態学所見に加え、1990年頃から個々の腫瘍関連遺伝子変異の発見に始まり、その後急速に発展し最近では次世代シークエンサーの導入によりビッグデータとして腫瘍型の体系的分類に多大な寄与が示されてきた分子診断の立ち位置を歴史的に再確認するとともに、2021年にさらに統合診断が強化された新WHO脳腫瘍分類の検証を行い、今後の脳腫瘍病理診断の主軸は変わらず組織診断であるか、あるいは分子診断と置き換わるのか、また新たなAIを含めた画像診断の統合も期待されうるのか、新分類で重視されたメチローム解析は今後どのような進化が見込まれるのか、など、幅広く多領域の会員と検討ができましたら幸いです。

この主題と関連して、海外からは脳腫瘍のメチローム解析の世界的権威であり、2018年にNature誌にメチローム解析による新たな脳腫瘍分類法を発表され、WHO脳腫瘍分類第5版(2021年)でも10章分の責任著者、分担著者であられるベルリンシャリテ医科大学神経病理学教授のDavid Capper先生を招聘し、ご講演を頂くことといたしました。Capper先生は2023年9月にベルリンで開催される第20回国際神経病理学会の会長でもございます。海外からはもう一人、ドイツのGöttingen医科大学血液腫瘍学准教授のBjörn Chapuy先生にも、中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)に関する分子遺伝子学見地からご講演を賜る予定です。Chapuy先生は長らく米国のDana-Farber癌研究所でPCNSLを始めとしたリンパ腫の基礎研究に従事され、世界に先駆けて包括的なPCNSLの病態解明に大きな足跡を残されております。是非cutting edgeなご講演をご期待下さい。

本学会では、シンポジウム、ワークショップ、一般口演、ポスター発表とともにディベートや症例検討会も行っていく予定です。さらに、脳神経外科医を中心として若手医師の教育も目的として、参加のしやすいオンラインでの脳腫瘍病理教育セミナーの開催も予定しております。詳細は学会ホームページでご確認下さい。

本稿を執筆している2022年6月の状況からは、本学術集会開催予定の2023年5月にはコロナ禍からwithコロナ体制へ無事移行しているものと予想いたしております。是非とも皆様と現地でお会いできることを楽しみにしております。多数の会員の皆様のご参集を心よりお待ちしております。

謹白
2022年6月吉日

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